■ 第三診 『ケツイ〜絆地獄たち〜』 ■ |
車を走らせつつ、できるかぎり冷静に考える。
疑わしい箇所は、4年前に影があった場所と同じ。
移動したり、広がったりしている様子はない。
4年前の場合は血管が重なって影のように写っていただけだった。
今回はどうだ?
4年前に比べレントゲンにくっきりと輪郭が写り、CTにも影が映った。
腫瘍なのか。
腫瘍だとして、大きさは2.5センチ〜3センチ。
痰に血が混じるといった悪性腫瘍の症状はない。
このサイズの腫瘍になれば何か症状があるのではないか?
わからない。
いままでなんでもなかった箇所が最近腫瘍化したのでは?
ありえる。
もし悪性だったら。
リンパ線や骨に広がってしまってはいない。
今ならば手術して摘出すれば助かる・・・。
けど・・・ガンなのか??
・・・・・・・・・・。
( ̄□ ̄;) だめだ・・・考えがまとまらねぇ・・・
自分の置かれた状況をどこか他人事のように感じて変に冷静でいながら、
それでいてフワフワと、完全に地に足がつかない。
明らかに混乱状態だ。
実家に到着。
両親に事態を説明する。
二人共 目に見えてあわてる様子はないが、心中、かなり面くらったハズ。
オトンも同行する事となり10時前に家を出て再び病院へ。
病院へ行くとすでに呼吸器専門の先生も到着しているようで、診察室へと通される。
先生がCT写真、レントゲン写真、血液検査の結果を見つつ、問診する。
『咳は出る?』
「まぁ、出ます。」
『痰に何か、血とか混じるような事は?』
「・・・ないですね。」
『背中は痛い?』
「んー。痛いっすね。」
先生から肺の仕組みの説明を受ける。
『で、問題の箇所だけど、これだけではなんとも分からないけど、一番怖いのは肺がんの可能性だよね。』
さらりと肺がんとか言ってのける。
まぁ、もう話の焦点はそこだし「がん」っていう名前が出てきても気持ち的に慌てるような事はなかった。
『血液検査では異常なしだったけど、これは肺がんの検査はしてないんだよね。』
(;゚д゚) え?肺がんの検査してなかったの!?
どうやら腫瘍マーカーと呼ばれるガンの検査はしてなかったようだ。
初回からタバコ吸ってて肺が心配と言ってるもんで、当然その検査はしてるもんだと。
つか、他はどーでもいいからそれしといてくれよそれ><。
『今回、もう一度採血してマーカーの検査するから。で、次回、その結果を見つつ、気管支鏡検査しましょう。』
気管支鏡検査―――
これは口からアームを入れ、気管支を通って肺の中へと入り、
肺の疑わしい部分の細胞を取り、その細胞が悪性かどうか調べる検査だ。
ようは胃カメラの肺版みたいなヤツ。
ただ、胃カメラのように太くて広い食道にアームを入れるのではない。
気管支の中へと入れるのだ。
麻酔を使うと呼吸ができなくなってしまうので当然、麻酔も使えない。
たぶん、けっこう苦しいよ? (^▽^)
※:タバコ吸ってると遅かれ早かれこんな検査する事になるので苦しいの嫌な人はタバコやめちゃおう(^▽^)/
普通なら絶対したくないような検査だけど、こっちは命がかかっているような状態。
やれば助かる。やらないと死ぬ。 みたいなノリなのですんなりと覚悟は決まる。
『それでもし悪性だった場合は、腕の良い医者ががんセンターにいるから。紹介状を書きますから。』
がんセンター
健康な人が聞いたら、おもわずゾっとしてしまうくらい直球ネーミングなこの病院。
その名の通り、がんの治療を専門とした病院である。
がん治療では有名であり、医療レベルも高く、他県からも患者が治療にやってくる程だ。
このがんセンターでの診察には紹介状が必要で、いきなりおしかけて診てもらう事はできない。
他の病院で、ガン、もしくはガンの疑いがあると診断された場合に、
紹介状を書いて貰ってはじめて診察してもらえる病院だ。
しかし、がんセンター・・・
出来る事ならばお世話になりたくない病院だろう。
僕も普段の生活の中でこの病院の名前を聞いた時には、あまり良いイメージは浮かんでこなかった。
どちらかというと「ジ・エンド」といったイメージだったが、いざこんな状況になってみると間逆。
がんセンター=救世主、メシア、救いの神
最悪の場合にも、まだ手段が残されている。
それもガン治療においてはほぼ最高レベルの施設が近所にある。
なんて頼もしいんだ!がんセンター!
先生が予定をチェック。
色々と埋まっているらしく、血液検査の結果を待たないといけない事もあり、次回の診察は7月22日。
今回 |
次回の診察 |
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って、随分先だな・・・。
ガンかもしれないのにこんなに待つのか・・・・。
自分の体の中に、何か悪いモノがあると思うと1分1秒でも早く取り去りたい気分だ。
とりあえず今日のところは肺がんの疑いを調べる腫瘍マーカー用の採血をして終わり。ってことで採血ルームへ
オバチャンズがいる。
『もう、ここじゃなくて市立病院行ってきちんと検査した方がいいよ。』
「んー。」
オバチャンズは精度の高い機器の揃った大病院へ行く事をすすめる。
オバチャンズも色々と相談してくれたみたい。
「なんか腫瘍っぽいもの自体はもうあるっぽいんだよね。」
『見つかったって?』
「たぶん。で、次回気管支鏡検査して、悪性だったらがんセンターの紹介状もらうって事になってて。」
『それじゃあ、なおさら行った方がいいよ。』
『ここで検査しても、どうせまた向こうで検査する事になるよ?』
『そうだよ。ここで1週間検査待ってまた向こうで検査して待ってたらどんどん時間かかっちゃうわよ』
『自分の子供だったらすぐにでも連れてくよ。』
とりあえず段取りが決まっているから今の所はそれに従ってここで診て貰うつもりでいると伝えるが
それでもオバチャンズは至急、大病院、専門病院へ行った方が良いと薦めてくれた。
採血を終えて、この日の診察は終了。
実家に戻り、オカンにも報告。
現状では肺の影はまだなんだか分からない。
最悪の場合でも今の状態ならいくらでも方法があるから。
そう伝え、住まいのアパートへと帰宅。
その夜―――
( ̄□ ̄;) 寝れねぇ・・・
一人になってようやくこの非現実的な状況に現実味が出てきたのか、色々な事が頭をよぎって全然眠れない。
王道の「パソコンの中のエロ画像どうしよう」からはじまり、お金の事やらなにやら次々と浮かんでくる。
大学時代の友達連中の顔が浮かんだ。
あいつらに「俺、肺がんになっちゃったでしゅへへ^^」とか言ったらどんな顔されるんだろうか?
どんなリアクションとって良いか分からないって顔で「大丈夫だよ!」とか言われるのかな。
冗談じゃねーぞ。
ネットでサイトを見てくれてる人達も、動かなくなった「動く城」を見て何かを察するんだろうか?
両親の事を考えると、なんと親不孝者なのかと思える。
色んな人の事が思い浮かぶ、それと同時にある感情が強く湧き上がってきた。
死ねない。
死にたくない、という感情よりも前に、遥かに強く、死ねないという気持ちが湧き上がってきた。
誰かを悲しませて泣かせるような事はごめんだ。
嗚呼。俺って死ねなかったんだ。
できる事をしよう―――
自分の中で考えが切り替わった。
もうガンかどうかにビビってる場合ではない。
問題なのはガンかどうかではなくて、生き残れるかどうか、だ。
病院でのオバチャンズの言葉が思い出される。
『すぐにでも大病院へ行った方がいい』
確かにそうだ。
律儀に待ってる必要はないよな。
できる事は全部しよう。
今、動かずにいて
『あと1週間早く来ていれば助かりましたが、もうダメですね。手の施しようがないです。』
みたいな展開は最低最悪だ。
待っちゃっあいられない。
明日、行こう。
ガンセンターへ―――
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