本日、仕事の合間に久しぶりに書店に足を運んだ。
書店の棚には目を通している雑誌全てが見たことのない表紙になって並んでいた。
嬉しいな読むものがいっぱいだ。
しばし仕事を忘れ楽しい趣味の時間を満喫しよう―――という矢先
店内のどこからか女性の大声が聞こえてきた。
最初は店員かと思ったが口調からするとどうもそうではなさそうだ。
何かに怒っているようだ。
クレーマーか何かか?
しかし聞こえてくるのは一人の女性の声ばかり、携帯電話で喋っているのだろうか?
声のボリュームは段々と上がり、静かな店内に女性の怒声が響く。
このままでは立ち読みに集中できない。
一体どいつが喋っているのかと声の主を探すと店の奥にそれらしき女性の姿を見つけた。
周りに人の姿は無く、やはり一人で喋っているようだ。
しかも携帯電話で喋っているわけでもなく完全に独り言のようだ。
と次の瞬間、女性は一冊の本を手に取ると、高々と掲げながら店中に聞こえるように叫んだ。
「私はずーと騙されていました!
医者の薬は です!
私は本のおかげで治ったんだ!
まったく 本はすごいよ!」
言い終わるとその女性は本を置き、さっときびすをかえし店の外へ歩いていった。
店内に残された僕達は、ただただ彼女の後ろ姿を見つめる事しかできなかった。
あの人の言葉の意味は僕にはよく分からなかったけど、きっとあの人はとても誠実な気持ちで
皆に本の素晴らしさを伝えたかっただけなんだと思う。
そしてそれを皆に伝える事が自分を救ってくれた本へのせめてもの恩返しだったのかもしれない。
店内からあの人の姿が完全に見えなくなった後、僕はあの人が掲げた本を手に手に取り、胸に抱きながら
心の中で呟いた―――
「治って・・・ないよなぁ」
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