アイプチ

2016年8月18日






梅雨の時期、低気圧のせいでひたすら頭痛に苦しむ僕に母はこう言った。

「目を二重にするノリが頭痛に効くらしいわよ。」

これが全ての"始まり"だった・・・・・。




「目を二重にするノリが頭痛に効く」

は? 一体何を言っているんだ母ちゃん。暑さのせいでおかしくなってしまったのか。

「ためしてガッテンでやってたのよ。」

そんなばかな・・・。


事の真偽を確かめる為ネットで検索してみると、何やらまぶたのたるみ?を解消する事で

頭痛や肩こりが改善されるという事らしい。まじかよ!?


アイプチでこの頭痛から解放されるなら最高だけど、本当?

いやでも本当だったとしてもアイプチ買うの相当恥ずかしいな。

薬局のアイメイクコーナーでアイプチを探すおっさん。あらやだ恥ずかしい。

レジのおねーさんにも (え、アイプチ!? このおっさんアイプチ!? えっ!?)

こう思われるに違いない。HA・ZU・KA・SI・I


だがしかし!

この頭痛から解放されるというならば恥辱に耐える価値はあるっ!







というワケで買ってきましたアイプチ(赤ら顔)

うふふ、アタシこれで綺麗になっちゃうわね。

鏡の前で何故か乙女チックな気分になりながらアイプチを塗るおっさん。ぬるぬる。


お、おお!これがアイプチ!

塗り方が下手すぎてまつげとか貼りついちゃって目、めちゃくちゃおかしいんだが・・・。


まぁでもこれで頭痛から解放されるなら最高よ!

こころなしか頭、痛くないような気がするしな!(THE・プラシーボ)


浮かれ気分でまつげを貼りつけたまま近所のスーパーへ。

するとそこで知り合いのおばちゃんにばったり遭遇。

話ながらやたら目を見てくるのが分かる。

(えっ・・・・この人アイプチユーザーなのかしら・・・・?)みたいな表情をするおばちゃん。

ち、違うんですっ 誤解ですっ 頭痛っ 頭痛なんですっ

ジーザス!なんだこの辱め!


そんな事がありつつもアイプチを塗るのは思いのほか楽しくて、僕は翌日以降もまぶたを貼り付けて

過ごす事にした。

そのうちアイプチの使い方も上達してきて、まつげを貼りつけるような失敗も無くなった。

もう僕も立派なアイプチユーザーだ。


そう思っていたある日、家に遊びに来た友達が僕の顔を見るなり驚いた表情でこう言った。

「どうしちゃったのその目!腫れてめちゃくちゃ小さくなってるじゃん!」

え・・・ええぇーっ!?


いやいや待ってくれ。

別に目腫れてないよ。痛くも痒くもないし充血とかもしてないし。

「だって目、めちゃくちゃ小さくなってるよ?」

・・・・・なんですって(^▽^)


実は僕は元々二重なのだ。

元々二重なんだけど頭痛が改善されると聞いてアイプチを使っていた。


しかし自分では気づいていなかったんだけど、どうやらアイプチを塗る場所がまずかったらしく、

これまでずっと普段の目よりも小さくなるようにまぶたを貼り付けていたようなのだ。

普段よりも小さくなった僕の目を見て友達は、僕の目が腫れていると勘違い。


たしかにそう言われてみると目が小さくなったような気がする。限りなく一重に近くなっている。

一度気になり始めると違和感はどんどん大きくなり、次第に顔までおかしく見えてきた。


おかしい!確かにおかしい!今までの顔じゃない!

そう思ってアイプチを洗い流したが連日のアイプチ生活でまぶたにくっきり"折り目"がついてしまった

ようで元の目に戻らない!ジーザス!


よくネットで女の子が、アイプチとメイクですごい可愛く変身しましたぁ☆*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・ ・*:.。. .。.:*

っていうのやってるけど完全にそれの逆バージョンだ。

おっさんがアイプチしてブサイクになって戻らなくなってしまいましたぁ☆*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・ ・*:.。. .。.:*

お・し・ま・い☆








































いやいや、お・し・ま・い☆じゃないよ。

こうなったら元の目に戻るようにアイプチで"折り目"をつけ直すしかない!


・・・・だけど元の目ってどんなだっけ。

自分の目なんて毎日鏡で見ていたはずなのに、いざアイプチしようとするとまるで分からない。

完全に山岸由花子状態である。







これは写真を見ながらじゃないと無理だ。

携帯を取り出しサイトのテキストで使った自撮り写メを開く。

顔までの距離が近い自撮り写メならば目の様子がはっきり分かる。

これを頼りに目を元に戻そう!


早速、写メを参考にまぶたを貼り付ける。

新しい顔を自撮りする。

昔の写メと見比べる。

うーん、なんか違う。


この工程を600回(600回!?)ほど、一ヶ月以上にわたり繰り返し、最近ようやく元の目に

戻れたような気がする。

その間、周囲の人々にコロコロ変わる僕の目をめっちゃ見られて辱められたのは言うまでもない。


梅雨もあけ、頭は痛くなくなったけど、かわりに周囲の人々からの視線が痛い夏となった。